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取引信用保険とは?ファクタリングとの違いについて解説

取引先の倒産リスクに備えるための保険に、取引信用保険があります。この保険をかけることで、営業上で得た売掛債権が、取引先企業から万一回収不能になった場合などの損害に対して、保険金を受け取ることができます。

ファクタリングと同様に売掛債権を対象にするなど、似た部分もある取引信用保険。その概要と企業が利用するメリットのほか、ファクタリングとの違いについてまとめました。

売掛債権を保全する取引信用保険

売掛債権を保全する取引信用保険
取引信用保険は、保険会社が取り扱っている企業向け保険の一種です。保険の対象となるのは企業の売掛債権で、取引先から回収不能になった際に保険金が支払われます。
ただし、天災や戦争といった一部の理由は対象外です。取引先が倒産したり、金融機関から取引停止処分を受けたりした場合は、保険金の支払い対象となります。

補償の対象

取引信用保険は、取引先に今後発生するであろう売掛債権全体について保険をかけるものです。
1社のみを指定して保険をかけることはできず、取引先全社や、売上上位10社、上場企業以外、特定部門の全社など、複数の会社を指定するものです。具体的なかけ方については、保険会社によって異なります。
なお、加入には各会社にいくらまで保険をかけたいかという「希望与信額」を伝えた上で、それをもとに保険会社が支払い限度額を決定します。

保険料

取引信用保険の保険料は、年率1~3%程度とそれほど高くはありません。しかし、保険の対象となるすべての企業の支払い限度額の1~3%となるため、トータル金額としてはある程度大きい額となります。
例えば支払限度額1,000万円の取引先2社と、支払限度額500万円の取引先8社に、保険料率3%で保険をかけた場合の保険料は、下記のようになります。

<10社をトータルした取引信用保険の保険料>
(1,000万円×2社+500万円×8社)×3%=180万円

支払い限度額と縮小率

取引信用保険には、支払われる保険金額を算出する際に、縮小率が使われます。一般的には90~95%で設定されるもので、万一、取引先が倒産した場合は、実際の損失額に縮小率を掛けた金額と、企業ごとに定めた支払い限度額のうち、どちらか低いほうの金額が補償されます。

<補償額の計算例1>
縮小率95%で支払い限度額500万円のA社の売掛債権400万円が回収不能に陥った場合

400万円×95%=380万円<500万円 ※支払い限度額より低い
補償額:380万円

<補償額の計算例2>
縮小率95%で支払い限度額500万円のA社の売掛債権600万円が回収不能に陥った場合

600万円×95%=570万円>500万円 ※支払い限度額より高い
補償額:500万円

なお、縮小率は保険会社によって異なるため、取引信用保険に加入する際には、保険料率と同様に縮小率についても確認しておきましょう。

保険対象となる期間

取引信用保険の対象となるのは、契約期間中に発生した売掛債権のみです。
たとえ、契約した後に入金予定日がやってくる売掛債権であっても、契約時点ですでに発生した売掛債権である場合は、補償の対象外となります。反対に、契約期間終了後に支払われる予定の売掛債権でも、債権発生日が契約期間中であれば補償の対象となります。

取引信用保険のメリット

取引信用保険のメリット
取引信用保険を企業が利用するメリットは、どこにあるのでしょうか。法人間の取引で活用される理由は、以下のとおりです。

与信管理の充実

企業が安定的に経営をしていく上で、取引先の与信管理はとても重要です。しかし、決算書類などを読み解いて与信管理を行うには限度がありますし、時間や労力もかかるでしょう。また、新規取引先との契約を検討する際には、確実な信用調査ができずに大きなビジネスチャンスを逃してしまう可能性もあります。

取引信用保険を利用する際には、保険会社による取引先の与信審査があります。与信管理を保険会社に代行してもらえるだけでなく、万一のときも補償を受けることができるので、新規開拓をする際の安心材料のひとつとなるでしょう。

簡単な手続きで利用できる

取引信用保険は、複数の取引先に対してまとめて保険をかけます。会社ごとや取引ごとの契約ではないため、頻繁に契約手続きをする必要もなく、大きな手間はかかりません。

最初に契約してしまえば、その後1年間の取引について保険をかけることができますので、余計な事務手続きにわずらわされることなく、事業に専念することができるでしょう。

売掛金を確実に回収できる

取引先の倒産などによって売掛債権が回収不能に陥ると、その余波を受けて大きな経営危機に見舞われる可能性があります。取引信用保険に加入しておくことで、こうしたリスクの回避が可能です。

取引先に万一のことがあっても、保険から売掛債権の90~95%(あるいは支払い限度額)を確実に回収することができますので、自社に及ぶ影響を最低限に抑えることができるでしょう。

損失の平準化が可能

取引信用保険の利用には、保険料がかかります。とはいえ、取引先企業が倒産してしまった場合、債権回収コストは大きくなりますし、その分の利益をほかの取引先で埋めるのも簡単なことではありません。

取引信用保険に加入しておくことで、万一の際の被害を回避し、損失(支払い)を平準化することができます。
なお、取引信用保険の保険料は、全額を経費として計上することができるため、節税にもつながります。

取引信用保険とファクタリングの違い

取引信用保険とファクタリングの違い
取引信用保険とファクタリングは、どちらも取引先の売掛債権に関するサービスですが、目的や対象範囲が異なります。両者の違いをまとめました。

目的

ファクタリングは、取引先の売掛債権をファクタリング会社に売買・譲渡することで早期現金化する方法です。一方の取引信用保険は、取引先の倒産に備えて、売掛債権に保険をかけてリスクを回避するための手段です。

取引先の範囲

ファクタリングは、基本的には法人企業との取引で発生した売掛債権が取引対象となります。

一方、取引信用保険では、個人事業主との取引債権も対象に含まれる場合が多いものの、原則として物販(商品など、物の売買)が対象です。サービス業などの請負についての売掛債権は、対象外となる場合が多くなっています。自社の取引先が対象外の場合は、そもそも取引信用保険に加入することができません。

また、ファクタリングは任意の1社の売掛債権を選択して申込みをすることができますが、取引信用保険は複数の企業に対して保険をかけます。取引先の上位◯社など、ある程度の対象を絞ることはできますが、希望の対象企業1社だけを指定して保険をかけることはできません。

対象となる売掛債権

ファクタリングは、特定の1社に対する特定の売掛債権をファクタリング会社へ譲渡しますが、取引信用保険は、契約期間中の取引先に発生したすべての売掛債権が保険の対象になります。
ただし、保険金が支払われるのは、保険対象の売掛債権が回収不能に陥った場合のみです。

保険料や手数料

ファクタリングの利用手数料は、3~20%程度です。
ファクタリング会社、自社、取引先の3社間で取引を行う「3社間ファクタリング」であれば手数料は低めですが、ファクタリング会社と自社の2社間で取引を行う「2社間ファクタリング」の場合、手数料は高めに設定されることが一般的です。

一方、取引信用保険の保険料は1~3%程度です。ただし、回収不能に陥った売掛債権についてだけでなく、保険対象とするすべての会社の支払い限度額に保険料率をかけることになるため、金額自体はある程度大きくなります。また、売掛債権が回収不能に陥らなければ、保険料は掛け捨てとなります。

告知ルールがある

取引信用保険を利用する場合、保険会社への告知義務があります。例えば、取引先の経営が傾いていることを知りながら、それを報告せずに取引信用保険を利用した場合、取引先が倒産しても補償の対象とはなりません。取引先の信用情報などについては、真実を報告しましょう。

取引信用保険とファクタリングは異なる特徴を持っている

取引信用保険が取引先全般の売掛債権の回収不能に備えるのに対し、ファクタリングは特定の売掛債権を譲渡することで早期現金化を図ることができます。取引信用保険とファクタリングは、それぞれ異なる目的で使われるため、その違いを理解しておきましょう。