売上債権回転期間とは?計算方法と経営に役立てるためのポイント

企業間の商取引では、商品などの引き渡し時にその代金を支払うのではなく、後日まとめて請求・支払いをする「掛取引」が一般的です。しかし、掛取引は、商品を引き渡した日から着金の日まで、1ヵ月以上時間がかかるケースが大半であることから、経営者は資金繰りに注意する必要があるでしょう。効率良く売上債権を回収できているかどうかは、売上債権回転期間で知ることができます。
ここでは、売上債権回転期間の意味と計算方法のほか、経営への活用法をまとめて紹介します。
売上債権回転期間の基礎知識
売上債権回転期間とは、売掛金や受取手形といった、売上債権が発生してから実際に現金を受け取るまでにかかる期間を示す指標です。日数単位で示す場合は、「売上債権回転日数」と呼ぶ場合もあります。
そして、この売上債権期間が短いほど、売上債権が短期間で回収されているということがわかります。
売上債権回転期間の計算方法
売上債権回転期間は、日数や月単位で示すことができます。
計算式は下記のとおりです。
売上債権回転期間=売上債権÷(売上高÷365日)
<月単位の場合>
売上債権回転期間=売上債権÷(売上高÷12ヵ月)
売上債権回転率は売上債権を回収する早さの指標
売上債権回転期間のほかにも、資金繰りが健全であるかを確認する指標として、売上債権回転率があります。売上債権回転率は、売上債権を回収するまでの早さを示し、売上債権回転率が高いほど、売上債権が効率的に回収されていることがわかります。
計算式は下記のとおりです。
売上債権回転期間からわかること
会社の経営状態を知りたいと思ったとき、まずは売上をチェックするという経営者も多いでしょう。実際、売上高が高い企業は、それだけ多くの商品を販売しているということですから、これも決して間違いではありません。
しかし、売上には、実際にはまだ支払われていない、売上債権の金額も含まれています。そのため、手元資金がどのくらいあるかを知りたいときは、売上を確認しても正確な金額を知ることができません。
そこで確認したいのが、売上債権回転期間です。
売上債権回転期間を見れば、売上と入金の差がどの程度あるのかを把握することができます。売上債権回転期間が短ければ、「現金を早期に手にすることができていて、資金繰りがスムーズである」といえるでしょう。
反対に、売上債権回転期間が長くなっていくと、手元資金不足や、手元資金不足による融資の利用で利息負担が増加したといった理由で、資金繰りが困難になるリスクが高まります。
売上債権回転期間の平均値
2020年5月に発表された財務総合政策研究所の「法人企業統計調査からみる日本企業の特徴」によると、売上債権回転期間の平均は、2018年度で1.85月となっています。
また、資本金1,000万円未満の会社の平均は、製造業が1.64月、非製造業が1.07月となっており、資本金の額が大きくなるほど売上債権回転期間も長くなっていることがわかります。製造業が非製造業に比べて売上債権の回収までに時間を要することは、業界特有の傾向といえるでしょう。
自社の売上債権回転期間が適切かどうかは、業界の特徴を踏まえた上で確認することが大切です。
売上債権回転期間を把握するメリット
売上債権回転期間を把握することで、どのようなメリットがあるのでしょうか。売上債権回転期間からわかることについて見ていきましょう。
資金繰りが苦しい理由を探ることができる
「ここのところ資金繰りが苦しい」というときは、売上債権回転期間が長期化していないか確認してみましょう。「取引先と新規契約を結ぶ予定だが、その会社の支払いサイトが長く、売上債権回転期間が長期化している」といった場合は、新たな仕事を受ければ受けるほど手元資金が不足し、「資金繰りがきびしい」と感じる原因になる可能性があります。この場合は、契約を見直すか、つなぎ資金を調達するなどの対策をとる必要があるでしょう。
一方、売上債権回転期間は以前と変わらないにもかかわらず資金繰りがきびしいという場合は、支払いサイト以外の要因がある可能性が高くなります。売上の減少や支出の増加など、経営を圧迫している要素がどこにあるのかを探り、対処しましょう。
支払いサイトが客観的にチェックできる
定期的に売上債権回転期間をチェックして推移を知ることで、過去と現在の支払いサイトを客観的に把握することができます。
「最近支払いサイトが延びている気がする」という印象があっても客観的な指標がなければ、実際に延びているのかどうかはわかりません。実際に支払いサイトが延びているとすれば、どの程度長くなっているかを理解するには、売上債権回転期間を活用して、実態をつかむことが大切です。
売上債権回転期間が長い場合の対処法
長期化している売上債権回転期間をそのまま放置すると、資金繰りの悪化を招きます。資金がショートする前に、早めの対処を心掛けましょう。
取引先に交渉する
売上債権回転期間を短くするためには、取引先の支払いサイトを短縮してもらう必要があります。
とはいえ、顧客に対して「支払いを早めてほしい」とは、なかなか依頼しにくい場合も多いでしょう。しかし、業界内の平均から考えた上で、極端に長い支払いサイトで取引を行っている場合は、交渉の余地があると考えられます。
一方、それほど長くない支払いサイトで取引をしているのであれば、無理な交渉をしようとすると、顧客からの不興を買う可能性もありますので注意が必要です。
売掛金の回収漏れをなくす
売掛金の回収漏れがあると、いつまでも売上の回収がなされていない状態が続き、売上債権回転期間が長期化する原因となります。支払いサイトにはそれほど問題がないのに売上債権回転期間が長くなっている場合は、回収できていない売掛金がないか確認してみましょう。
また、日頃から売掛金が期日どおりに入金されているかどうかをチェックする習慣をつけることも大切です。
受取手形を回し手形や割引手形として活用する
受取手形をそのまま保有するのではなく、回し手形や割引手形として活用することでも、売上債権回転期間を短縮できます。手形取引をしている企業は、期日まで現金化を待つだけでなく、資金繰りに活用することも検討してみましょう。
回し手形についてもっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
回し手形(裏書手形)とは?しくみとファクタリングとの違いを解説
売掛債権をファクタリングで早期現金化する
取引先に交渉することなく売掛債権の現金化を早められる方法に、「ファクタリング」があります。
ファクタリング会社に売掛債権を売買・譲渡することで、最短即日で現金を受け取ることができます。売上はあるのに手元資金が足りないというときは、ファクタリングをつなぎ資金として活用しましょう。
ファクタリングについてもっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
請求書の買取で現金化!スピーディーに資金調達できるファクタリング
自社の売上債権回転期間を確認しながら経営に活用しよう
売上債権回転期間を確認することで、売上債権をどのくらいで回収できているのかを、客観的に知ることができます。まずは現状把握のために、自社の売上債権回転期間を計算してみましょう。
また、継続して売上債権回転期間を把握し、推移を記録していくことで、資金繰りがきびしくなる予兆を察知し、早期に手を打つこともできます。安定した経営を目指すためには、売上債権回転期間の活用をおすすめします。