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電子記録債権(でんさい)とは?ファクタリングとの違いと共通点

「でんさい」と呼ばれる電子記録債権は、近年普及が進んでいる新しい債権の形です。特に、これまで手形を利用していた企業にとって利用するメリットが大きく、支払う側、受け取る側、双方にとって便利な手段だといわれています。

ここでは、でんさいの特徴やどのような点が便利なのかといったポイントとともに、でんさいと比較されることも多いファクタリングとの違いや、使い分けについて解説します。

新しい決済手段である電子記録債権(でんさい)

電子記録債権(でんさい)とは、全国銀行協会の電子債権記録機関「全銀電子債権ネットワーク(でんさいネット)」が取り扱う新しいタイプの債権のことです。

従来の手形や振込による売掛債権支払いや回収には、手形の紛失リスクや事務手続きの煩雑さ、現金化の自由度の低さといった問題点がありました。しかし、でんさいネットを利用することで、こうした問題を解決することができます。

でんさいは債権を電子記録した金銭債権

そもそも債権は、ある人が、他者に対して持っている「請求する権利」のことです。
例えば、A社がB社と契約を結んで100万円分の商品を納入し、月末締め翌月末払いの請求書を出したとします。このとき、A社はB社に対する100万円の売掛債権を保有していることになります。その後、支払い期日が来ると、B社はA社に100万円を振り込んだり、支払手形を振り出したりして、料金を支払います。

このような商取引の債権を電子記録したものが、でんさいです。でんさいを利用すると、A社がB社に債権を持っているということがでんさいネットに記録されます。そして、支払い期日になると、でんさいに応じた金額が取引金融機関からA社に支払われることになります。

でんさい取引の流れ

では、実際にでんさいを利用した取引は、どのようになるのでしょうか。A社がB社に対してでんさい取引で100万円を請求する場合、以下のような流れになります。

<でんさい取引でA社がB社に対して100万円を請求する場合>

  1. A社、B社がそれぞれ取引金融機関を通して、でんさいの利用申込みをする
  2. A社とB社に、利用者番号が割り当てられる
  3. A社はB社に、あらかじめ利用者番号と決済口座の口座番号を知らせておく
  4. B社が取引金融機関に対して、でんさいの発生記録手続きを行う(A社が債権者である旨や、支払い期日、支払額などを登録。登録はインターネットバンキングなど、取引金融機関が指定する方法で行う)
  5. B社の取引金融機関を通して、でんさいネットにでんさいの発生記録が記録される
  6. 支払い期日に、でんさいネットからB社の取引金融機関に決済情報が提供される
  7. B社の取引金融機関を通して、B社の口座からA社の口座に支払いが実行される
  8. 決済が完了すると、でんさいネットに自動で支払い記録が記録される

慣れないと面倒に感じられるかもしれませんが、最初の利用手続きさえ済んでしまえば、それ以降の手続きは簡単です。支払い企業(上記の場合はB社)は取引金融機関にウェブ上で発生記録手続きを行うだけで、期日に指定口座から指定の代金が引き落とされます。
一方、支払われる側の企業(上記の場合はA社)は、期日に入金された金額を受け取るだけ。取引の手間や時間をあまりかけずに行うことができるでしょう。

手形取引をでんさいにした場合のメリット

手形取引をでんさいにした場合のメリット
これまで手形取引を行っていた企業にとって、でんさいには支払う側と支払われる側、双方にメリットがあります。手形取引をでんさいに切り替えた場合のメリットは、それぞれ以下のとおりです。

<支払う側のメリット>
・手形帳の代金や印紙代、郵送代のコストがかからない
・手形の発行や郵送の必要がないため、労力を軽減できる

<支払われる側のメリット>
・取立不要で期日に自動入金される
・必要な分だけ分割して、譲渡や割引ができる
・領収書の発行が不要(詳細は取引先との契約によって異なる)

支払う側にとって、コストや労力面について大きなメリットがあります。取引の一部をでんさいにすることで、事務手続きにかかっていた時間とお金を減らすことができるでしょう。

一方、支払われる側から見ても、手形と同様に譲渡や、支払期日よりも前に銀行や貸金業者に譲渡したのちに、割引料などを差し引いて資金化できる割引が可能なことがメリットです。取り立て不要、領収書不要、分割可能と、より簡単に、高い自由度で活用できるというメリットもあります。

買掛金(振込)をでんさいにした場合のメリット

買掛金(振込)をでんさいにした場合のメリット
振込で代金の支払いを行っている企業にとって、でんさいを導入するメリットはそれほど大きくありません。複数の金融機関を利用している企業は、取引をでんさいに一本化することで、手続きにかかる労力を減らすことができるという程度です。

一方、支払われる側の受け取り企業にとってはメリットがあります。
でんさいでは、支払う側の企業が債権の発生手続きを行った日以降、いつでも割引や譲渡が利用できます。しかし、振込の場合は、原則として支払い期日が来るまでは債権を活用することができません。

早期に現金を手に入れたり、他社に譲渡することで支払いに活用したりできるというのは、資金繰りの面でメリットになるでしょう。

でんさいとファクタリングを徹底比較!

でんさいは、期日前に割引して現金化したり、譲渡したりすることができます。一方、ファクタリングは、債権をファクタリング会社に譲渡することで早期現金化する手法です。

どちらも、「支払い期日よりも前に現金として利用できる」という特徴を持ちますが、実際には、両者はまったく別ものです。それぞれの共通点や相違点をご紹介します。

でんさいとファクタリングの意味

でんさいは、電子的に記録した債権のことで、ファクタリングは、債権をファクタリング会社に譲渡することです。

でんさいが債権そのものであるのに対し、ファクタリングは債権を譲渡するという行為ですから、そもそもの言葉の意味はまったく違うものとなります。

でんさいの割引とファクタリングの共通点

でんさいは、手形と同じように、期日が来る前に割引して現金化することができます。一方、ファクタリングも、ファクタリング会社に対して債権を譲渡して早期現金化ができますから、「早期現金化が可能」という点は、両者の共通点だといえるでしょう。

また、債権譲渡の手続きは、でんさいの場合はでんさいネット、ファクタリングの場合はファクタリング会社を通して行います。このように、手続きに取引先企業以外の第三者が介入するという点も、共通しているといえるでしょう。

でんさいの割引とファクタリングの相違点

でんさいの割引とファクタリングにはさまざまな相違点がありますが、そのうち最も大きなものが、支払いが実行されなかった場合の取り扱いです。

でんさいの割引を利用して債権を早期現金化したが、支払い期日に取引先からの入金がなかった場合、割引を行った金融機関は、債権者に対して取り立てを行います。一方、ファクタリングでは、取引先からの入金がなかったとしても、ファクタリング会社から債権者に請求が行くことはありません(償還請求権なしの取引の場合のみ)。

また、手続き面での簡便さやスピード感にも違いがあります。
でんさいを利用する際は、取引企業と自社の双方がでんさいネットへの登録作業を行わなければいけないなど、一定の準備が必要です。そのため、思い立ってすぐに利用するということはできません。その点、ファクタリングは申込みから数日程度で現金化が可能なため、急ぎの資金調達にも適しています。

でんさいを活用したファクタリング

でんさいを活用したファクタリング
でんさいとファクタリングはまったく別のものですが、ファクタリング会社を介してでんさいを行うサービスを行っている金融機関もあります。

ただし、これは債権者が債権の早期現金化のために利用するファクタリングではなく、債務者が手形の代わりに利用する「一括ファクタリング」に代わるサービスとして提供されているものです。利用するためには支払い企業が審査を通過する必要があり、債権者側から利用を申し出ることはできません。

でんさいを活用したファクタリングの特徴

通常、でんさいを利用するためには、支払い企業と支払われる企業双方が、でんさいネットに登録する必要がありますが、ファクタリング会社を通すことで、支払われる企業側の登録を不要にしたのが、でんさいを活用したファクタリングサービスです。

支払い企業はファクタリング会社に対して支払いを行い、支払われる企業はファクタリング会社から代金を受け取ります。この取引は、すべてでんさいネットに記録されます。

でんさいファクタリングの利用メリット

支払い企業は、通常のでんさい取引と同じように、コスト削減や労力削減効果が見込めます。支払われる企業側にとっても、割引による早期現金化や手形の紛失リスクの削減といった、でんさい取引と同様のメリットがあります。さらに、ファクタリング会社を通すことで、安定的に資金を得ることもできるでしょう。

でんさいとファクタリングを目的に応じて活用しよう

でんさいは、債務者と債権者双方が申込みをすることで利用が可能になる新しい決済方法です。でんさいを使うことで、割引による債権の早期現金化や分割譲渡などが可能になりますから、より自由に債権を活用しやすくなるでしょう。

一方、ファクタリングは、取引先企業の同意なしに、スピーディーに債権を現金化できる方法です。今すぐ現金が必要という方や、取引先の倒産リスクに備えたいという場合は、ファクタリングの利用がおすすめです。双方の特徴を知った上で債権を有効活用し、経営の安定化を図りましょう。